1. 前回の記事でその発言をとりあげた、「若手」の朝鮮史研究者である川瀬貴也氏が、私に対して反論を行なっているようである。「ようである」としたのは、川瀬氏の反論が、twitter上でほぼ友人相手になされていたり、自らのブログ上で匿名の人物のコメントへの応答としてなされているもので、私や読者一般に向けてなされた形のものではないからである。いずれにせよ、ここでは川瀬氏が、以上の形式で実質的に「反論」を行なっているものと見なすことにする。 川瀬氏の反論は後述するように極めて不誠実なものであり、しかも論理の体をなしておらず、かつ、肝心の論点に関してまともに反論することを回避しているために、この「論争」自体は生産性のある方向に発展しそうにない。だが、川瀬氏は、一般のリベラル・左派の言論人と異なり、「正直」や「計算をしない」という「美徳」を持っておられるように見える。したがって、「良心的」知識人を自認