「なんで紅白に出てるの?」 大晦日の夜、悪気のない声色で言い放ったのは母だった。僕はその一言に背筋が伸びるようなショックを受けた。確かに。音楽的センスは間違いない彼だが、そんなこと知ったこっちゃない40代後半のオバサンからしたらば本当に本当にただの青年にしか見えないのだろう。 物事は意外と、その最前線でバリバリ関わっている人間よりも、まったくの予備知識を持たない素人の方が斬新な発想を持ってくる。 僕は音楽のプロでも玄人でもない。言うなればファン。ただ音楽がちょっと好きなだけの人。対して、うちの母のように「顔が好きだから」という理由で20年近くB'zのベストアルバムを聴き続ける人間からしたらば、星野源のバックボーンはもちろん、今音楽がどういう経緯をたどって彼の音楽が「最新鋭」という暗黙の合意に至ったのか、そんなことは知らんのである。360度回ってきて逆に新しいんだよ!なんて言っても、その過程