20 スティグマ論 20−1 社会的弱者を苦しめる社会心理現象 役割としての社会的弱者 この章では、権力作用の問題を〈医療と福祉の対象となる人びと〉を中心に考えてみよう。 このような人びとは、どのような役割を担っている人びとだろうか。たとえば、それは子ども・高齢者・病者・障害者・低所得者・失業者・公害被害者といった役割である。これらの役割におかれている人びとは一般に「社会的弱者」とよばれている。能力中心主義の近代産業社会にあって、社会的弱者はなんらかの不利益をこうむることが多かった。そこで現代社会では、さまざまな福祉サービスを保障することによって、実質的な平等への努力がなされつつある。 とはいうものの、社会的弱者は一般に暴力や犯罪の対象にされやすいし▼1、こと企業社会においては、あいも変わらず成年男子の健常者中心の組織文化が支配している▼2。 それでも、弱者への暴力や犯罪・酷使といった逆行