この世にはたくさんの感動がある。山登りをする人間には、山を登っている時の空気の味、一歩一歩踏みしめていく時の感触といった他に代えがたい感動があるだろう。将棋をやっている人間には、将棋でしか味わえない読み合いが成立した一瞬、自分が知力の限りを尽くして考えた一手によって相手を乗り越えていった瞬間の感動のようなものがあるはずだ。背筋が凍りつき、今まで味わったこともないような、途方もない興奮を味わうことが出来れば、その人生は幸せだったといっていいのだと思う。何であれ、それぞれの領域にはそれぞれの戦慄がある。 僕にとってその戦慄を得る手段は、本を読むことだった。知らないことを知ること、まったく想像もしなかった世界を読み取ること。見たこともない光景を見ること。「ああ、生きてきてよかった」と心の底から思える瞬間が、今までたくさんの本を読んできて、幾度もあった。しかし当たり前だが、そう何度もあるわけではな
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