7年に及ぶフランス外人部隊での生活を終えたばかりの男にかける言葉のバリエーションは、それほど多くない。車は「フランス外人部隊本部」の敷地を出て、オバーニュ駅へと走り出した。 「なにを撮影したいのか。どんな景色の場所に行きたいか。なるべく具体的に教えてください。希望に沿えるような場所に案内しますから」 タクシーに乗るなり、結城健司(34歳)は言った。まだ除隊して5分も経っていないのに、どこまでも気を遣う青年だった。 「外人部隊はオバーニュに始まり、オバーニュに終わるのですよね?」 「そうですね。フランス各地の募集所にやってきた志願者は、オバーニュの本部に集められ、3週間の選抜試験を受けます。体力測定と適正検査、それから身元調査の意味も含めた尋問のような面接(ゲシュタポと呼ばれる)を経て正式採用されると、今度はカステルノダリの駐屯地で部隊兵として4カ月の訓練です」 約5カ月の訓練を乗り切った新