【本稿の要旨】 2022年3月3日、東京高裁は、行政による映画「宮本から君へ」の助成金の不交付処分を「適法」とする判決を下した。第一審・東京地裁が「違法」と判断したのとは逆であり、原告の逆転敗訴となった。この判決は、文化芸術の公的助成について「芸術的・専門的観点」を軽視しても良いと裁判所が行政に事実上お墨付きを与えてしまった点で、また、市民に強い「萎縮効果」を生じさせる点で、大きな問題がある。そして、美術をはじめとするアート関連の助成金や、あいちトリエンナーレ2019など芸術祭の補助金の今後の審査にも悪影響が及ぶほか、科研費など学術関係の補助金にもその波及効果が及ぶ危険がある。さらには、日本学術会議のような専門家組織の人事問題についても、行政による専門的観点を軽視した恣意的決定を正当化しかねない。高裁判決を受け、原告弁護団は記者会見を行い、上告することを表明した。原告弁護団のメンバーであり