世の中に不満があるけど、自分を変えるのがめんどくさいので、耳と眼を閉じ、口をつぐんで孤独に暮らすのもやぶさかではない。 関東一円を支配する戦国大名北条氏の当主氏康が、跡取息子の氏政と二人でご飯を食べていた時のこと。 息子の食べる様を見ていた氏康が、嘆きながら言った。 「ああ、わが家もおまえの代で滅びるのか」 「いきなり何を言い出すんですか、父上」 「おまえ、今ご飯にみそ汁をかけて食べたな」 「ええ」 「最初に汁をかけ、途中で足りないことに気付いて汁を足した」 「そのとおりです」 「食事なんて毎日するものだから、ご飯にどれくらいの汁をかければいいかくらい、自然とわかってくるものだ。それなのにおまえその程度の見積もできん。そんなことで家を保つことなどできようものか」 つまり父上は 息子がご飯にかける汁の量を推測できなかった →息子は頭が悪い →戦や外交が下手 →家は滅びる というステキ論法によ