大衆社会論の行方 ――近代的理性の危機―― 一、 大衆社会状況とその批判 大衆社会 現代社会は、一九世紀の社会形態との対比において、しばしば大衆社会と称される。それが意味するところは、必ずしも一義的ではないが、およそ以下のような社会状況が存在している社会であると一般に解されている。 (1)自然科学・技術の高度の発達を基盤とする大量生産(mass production)方式の進展によって、資本の集中化・独占化が進み、生産労働が質的に変化すると共に、大量生産方式の進展に伴って生じた大量のプロレタリアートが、新中間層に転化した状況。 (2)人口の都市集中が進み、大量生産に対応する大量消費(mass consumption)が拡大し、またそれに伴って生活様式が平均化・画一化した状況。 (3)大量生産・大量消費を可能にする物理的交通手段や精神的交通手段、特にマスメディア(mass media)の発達