ギシギシと巨体をきしませながら、霧の中から姿を現す「動く城」。素晴らしい映画の幕開きは、今年9月のベネチア国際映画祭でも多くの海外ジャーナリストの心を奪った。 「アニメーションの魔法」と、地元紙は記者の純粋な驚きを大活字で伝えた。「動く城」の迫力ある造形は、彼らの度肝を抜くのには十分だった。ガラクタを寄せ集めたような複雑な構造の城は、ハーモニーというアニメーションの技法で描かれている。 だが、担当した高屋法子(42)は「ハーモニーって本当はなくてもいいんです」と言ってのけた。 これまでも何度か紹介した通り、アニメーションの絵は、背景など動かないものを描く「美術」と、キャラクターなど動くものを描く「作画」に分けられる。 「美術」は一枚絵なので細密に描かれる。「もののけ姫」の美しい大自然や、「千と千尋の神隠し」の不思議な街を思い出して欲しい。一方、キャラクターは動きをつけるため何枚も描く必要が