国宝や重要文化財を含む、美術品や建造物などの修復に使われた合成樹脂が時間がたったことで劣化して曇り、絵画が見えづらくなるなどの被害が出ていることが、東京文化財研究所の調べで分かった。千件以上の文化財に使われたとみられ、被害は数百件以上ともいわれている。同研究所などが合成樹脂を分解する溶液の開発を進めている。 この合成樹脂は接着剤などに使われる「ポリビニルアルコール」。顔料がはがれるのを防ぐ効果があり、1940年代以降、美術品や建造物の修復で使われた。しかし、数十年経つと、表面に細かい傷が入り、すりガラスのように灰色がかって曇ってしまったり、硬くなって絵が反り返ったりする被害が出ている。 森田恒之・国立民族学博物館名誉教授によると、1980年代末ごろ、桃山時代の絵師・長谷川等伯(とうはく)一門が描いた京都・智積院(ちしゃくいん)の障壁画「桜図」(国宝)の表面が浮き上がり、反り返ったという