源氏物語絵巻(隆能源氏)関屋の帖(国宝・12世紀) すやり霞の原形ともいうべき霞の表現が山の腹を隠している。形状はごく不定形である。 春日権現験記絵巻第2巻(宮内庁・ACE1309) 鎌倉時代末期、既に様式化している 洛中洛外図屏風(上杉本)右隻(国宝・16世紀) 京都の街を埋め尽くさんばかりの金色の霞。決して街が霧に包まれているというわけではなく、純粋に視覚的効果のために挿入された様式表現である。 歌川広重「名所江戸百景」より「市ヶ谷八幡」(19世紀) 江戸後期から明治期にかけての錦絵、読本の挿絵などにおいても霞は多用された。 すやり霞(すやりがすみ)は、大和絵特有の、ある種の表現手法の通称である。槍霞(やりがすみ)ともいう。 画面の随所に“霞”を描き込むことによって、余白的効果をもたらして画面が煩雑になるのを避けたり、 日本的な遠近法として、画面の上方が標高が高いという約束ごとを積層す