米欧を中心に本格的な販売が始まったホンダの小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」。実はホンダにとって航空機参入は創業者、本田宗一郎氏からの夢だ。二輪車、四輪車に次ぐ第3の収益事業となるかはまだ先の話だが、半世紀余りにわたり受け継がれた「空への夢」は、「世界のホンダ」を築いてきたリーダーたちを育成する起爆剤にもなってきた。 「どこまで会社が真剣に考えているのか分からなかった」――。プロジェクトを主導した「ミスター・ホンダジェット」、ホンダエアクラフトカンパニー(米ノースカロライナ州)の藤野道格社長は当時をこう振り返る。 ホンダが航空機の研究チームを極秘裏に立ち上げたのは1986年。参加を命じられた藤野氏は「最初は疑心暗鬼だった」という。東京大学工学部で航空工学を学んだが、入社して3年目の「若造」。社内にはジェット機を開発するための技術やノウハウ、インフラもない。しかし、杞憂(きゆう)だった