所得税には、公共サービスの費用を徴収するほかに、高所得者から低所得者へ所得を再分配し、社会的な公平と活力を維持するという役割がある。ところが、日本の所得税は、この所得再分配の効果が極端に小さい。所得課税(所得税・個人住民税+社会保険料)の再分配効果を国際比較したOECD(経済協力開発機構)の資料を見ると、調査対象の21カ国の中で日本の再分配効果が最も小さいことが分かる。 一方、個人住民税を加えた所得税の最高税率は55%であり、諸外国に比べてもかなり高い水準にある。世界で最高税率が最も高い福祉国家、スウェーデン(約60%)に次ぐレベルである。日本の所得税は最高税率が高いにもかかわらず、なぜ所得の再分配効果が小さいのか。その理由として、日本政府が国民の税負担軽減のために積極的に活用する所得控除がある。 まず、日本の所得税制度の計算方法(概略、①式)を示す。所得控除には、基礎控除や配偶者控除、扶