地底王国「シャンバラ」 チベットには、太古の昔から伝わる理想郷がある。世俗から離れ、あらゆる悪徳が存在しない世界。その名を「シャンバラ」という。シャンバラとはチベット語で「幸福の源」のこと。理想郷シャンバラについて、最も体系的に書かれているのは、11世紀に成立したチベット密教の経典『カーラチャクラ・タントラ』(時輪タントラ)である。そこに描かれたシャンバラは、大きな七つの山々に囲まれ、その中央に蓮の花を広げたように存在する。蓮の花弁は8枚あるが、それぞれに12の属国があり、領主が存在する。さらに属国には100ずつの領域があり、個々に10万の町があるという。 しかしながら、現実問題として、かくも美しい国はチベットにも中央アジアのどこにもない。それゆえ学者をはじめ多くの研究家は、シャンバラは伝説だけの世界、すなわち幻想と考えている。いわゆる象徴であって、精神世界に存在する王国であろうというのが