魔法そのまま使えや
お中元やお歳暮で貰ったビールは社員で分け合う風習がある。 配られた日の夕方、給湯室で缶を開ける音がした。 おいおい定時近いとは言え勤務時間中に飲酒とはけしからんなと思って、からかい半分で給湯室を覗いたら後輩がビールをじゃぼじゃぼ捨てていた。 「何してるの?」 「ビール捨ててるんです」 「うんそれは見て解るけど、なんで?」 「うち家でお酒飲まないんです」 後輩は笑顔でそう言いながら引き続きビールを捨てる。 「そういうのは家で捨てた方がいいんじゃないかな」 「飲みもしないもの持って帰るの重いから嫌です。電車で邪魔ですし」 「いやでもせっかく貰ったのに…」 「欲しいなんて言ってませんし、断ったのに無理矢理押し付けて来ただけじゃないですか。 しかも人が席離れてる間にどんどん数が増えてくし」 (家で晩酌しない人が若い人の机にビールを置いて行く事があります) 「捨てるくらいなら私貰うよ」 「さっき差し
ちょっととりとめもない話をさせて欲しい。 バーの二階に住んでいたことがある。まだ高校時代、名古屋にいた頃だから、20年くらい前の話だ。 6畳の和室、狭い部屋だった。風呂なし、シャワーなし、トイレはバーのトイレと共用だが、夜バーが開いている間は使えないので、わざわざ近所の公園のトイレを使わなくてはいけなかった。 シャワーについては、学校のシャワー室に私用のシャンプーを持ち込んでそこで済ませていた。稀に銭湯に行くこともあった。 当時の私は、ちょっとした事情で、親元から離れて暮らしていた。 下手をすると学生の分際でホームレスになりかねないところだったのだが、友人からの人づてでそのバーのマスターを紹介してもらっていて、バーの2階に転がり込ませてもらった。 元々はバーの仮眠所だか、店員の部屋だかだったらしいのだが、光熱費に毛の生えた程度の家賃で住ませてもらっていた。 当時の私は、草の根BBSからのツ
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