就職試験は終った。大ていのところではいま、会社の将来を担うひなどりたちを選び終ってホッとしているところであろう。 ところが、さいきん、私は、少し考えさせられることを耳にした。証券会社に入社が内定した青年たちが、どんどん入社を断わりにきている、というのである。 事実とすれば、情ない話だ。株が暴落をつづけ、兜町に冷たい風が吹きはじめたからといって、そのことだけで、一たん身を投じる決心をしたものが翻心するとは、なにごとだろう。最初の決心そのものが、あやふやだったのではないだろうか。 いまは就職の売手相場である。証券会社に入社を断わりにきた連中は、きっと二股も三股もかけていたにちがいない。連中は売手の権利を行使してサラリーの悪くなりそうな会社を敬遠し、少しよさそうなところに鞍替えしたわけなのだろう。だが、かれらにもし掛け替えがなかったらどうしただろうか。それでもやはり断わりにきただろうか。それなら
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