岸 博幸(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授) 【第15回】 2008年11月14日 本当に強欲なウォール街が悪いのか? 金融危機を巡る3つの通説を疑え 欧米各国の政府の協調的な政策行動の成果で、金融危機は最悪の時期を脱し、市場も落ち着きを取り戻しつつあるように見えます(実体経済はこれから更に悪くなるでしょうが)。そこで、良い機会ですので、今回の金融危機を巡って流布している“通説もどき”が正しいのかを考えてみたいと思います。 金融危機を巡る報道やワイドショー系の評論家のコメントで一番目立ったのは、「ウォールストリートの証券会社の強欲さが今回の危機を招いた」、「資本主義の名の下に金融機関を自由にさせ過ぎたことが金融危機を招いたのであり、政府の規制や介入を強化すべき」、「米国経済は金融危機の影響でもうボロボロ」といった類いのものでした。本当にそうでしょうか。 まず第一の主張につ