(中央公論新社・3300円) 著者の熱意が照らす俳優の本質 言葉で人間を描くのは難しい。ましてその人間がさまざまな役に扮(ふん)して千変万化する役者であれば、その困難はいうまでもない。その困難を超えて、著者は二〇一二年十二月、五十七歳の若さで死んだ十八代目中村勘三郎の在りし日の姿を読者の眼前に蘇(よみがえ)らせた。 著者は勘三郎のその「天成その身体や心情が総じて丸く出来上がっている」「ヤマト民族が生んだ“高光る日の御子”」として描いている。ここに著者が書き留めた勘三郎の独特の資質の秘密こそ、どんな映像にもどんな記録にも残っていない、著者自身が掘り出すことの出来た勘三郎の人間としての魅力、役者としての存在意義であった。
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