序 首は、落ちた。 少年の一太刀であった。 鬼の首であった。 ごとりと地面に落ちたあとに半回転し、少年の足下で上を向いて止まったその顔が、驚愕に満ちている。 それを見て少年が嗤う。 この鬼の首を斬り落とした少年だ。 まだ年端もいかない幼い顔にヘビのような笑みを浮かべている。 少年は鬼ではない。人間である。 鬼の首に足を乗せ、前後に転がしている。 「殺せ……」 小さな、少年自身にしか聞こえない小さな呟き。 大地震が来る前の小さな揺れのような、大病を患った者の軽い咳のような、危険な小声。 それに気付いたのか揮(おのの)いた月が風を吹かせ、雲に隠れてしまった。 少年は鬼の首を蹴り飛ばし、血糊のついた刀を振り、 「殺せ殺せ殺せ殺せみんな殺せ殺せ殺せ一匹も残すな目に入る鬼は全て殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。」 壊れた玩具のように同じことを繰り返す。 とても正気ではない。 「そこに一匹