子供相手のガチャポン販売店を営んでいたぼくは、大人が三人も横に並べばいっぱいになってしまうような小さなスペースにトタン屋根が日除けのためにかざしてある、地方のバスの停留所のような販売店とは名ばかりの貧弱な店舗から得られるわずかな収入によって、妻のさゆみと二人で何とか生計を立てていた。ぼくたち夫婦は樹齢数千年はある大木の幹をそっくり刳りぬき、床材を敷き梯子をわたした二階建ての住居に暮らしていて、亜熱帯に位置するこの国ではそうした住居は低所得者層の象徴とされていた。10月を過ぎてもいささかも暑さがやわらぐことのないある日、ガチャポン業者から運び込まれた商品の蓋を開けたぼくとさゆみは、呆気に取られて互いの顔を見合わせるしかなかった。 それは子供達にとても人気の、蓋を開けると半球の片方に固定されたバネが作用して、さまざまなモンスターが勢いよく飛び出すというシリーズものの新作で、期待を賭けたぼくら