この人生に決断なんてものがあったろうか、と少し考えてしまったけれど、僕はたしかに決断してた、娘の出産について、だ。 僕は今、あの決断の先を生きているんだった。 妊娠発覚当時、妻は40歳になったばかりで高齢妊娠だったし、僕と出会うよりずっと前に経験した手術によって妊娠しにくい体質になったと聞いていた。 だから、妊娠を知ったときは驚いた。“いつか”も“そのうち”も考慮していなかった僕らにとって、その妊娠は青天の霹靂というほかなかった。 検査薬を使って妊娠を知った妻(当時婚約者)が僕にそれを告げるとき、どんな顔をしたか、僕はほとんど覚えてない。 彼女が妊娠検査薬を使ったのはライブハウスだった。一緒に行った大森靖子の生誕祭の日、彼女はひとり下北沢GARDENのトイレで妊娠を知り、僕に告げることなくそのライブを過ごした。妊娠してるかも、と思いながら、でもその事実を誰にも告げぬままライブを見る心境は想