HONZ読者の方々は、読みたい本がどんどん積み上がっていく毎日を送られているかもしれない。だが、それをさらに推し進めてくれるのが書評集である『サイエンス・ブック・トラベル』だ。もちろん、書評集なんてわざわざ読まなくたってこの世には読みたい本・読むべき本はたくさんある。油断をすると、ヤツラはいくらでも積み上がっていく。 『神話の力』という神話をめぐる本の中で、いつも僕に勇気を与えてくれる一節がある。稀代の読書家であり神話の専門家であったジョーゼフ・キャンベルが「課題図書が多すぎる」と生徒から訴えかけられた時の返答だ。曰く『いや驚いたな、全部読もうとしたなんて。人生はこれからだよ。一生かけて読めばいいんだ』と。まったくもってそのとおり。開き直りではあるが、いくら積み上がろうが、一生かけて読めばいいのだ。 本書の特徴を一つあげるならまずその専門性の高さだ。一人の人間の書評集ではなく、物理学者に生