「脱北」という言葉が日本社会に浸透してどれほどの時間が経つだろう。「北朝鮮国境を越えて命からがら逃げてくる行為」を意味するのは今さら説明するまでもあるまい。 現在、ライター・編集者として活動する野口さんは、かつて脱北者を支援する団体のメンバーとして活動していた。 脱北者を連れて中国を南北に縦断、東南アジアまで南下したのち最終的には日本へ送り出す。そんな危険極まりない行程を重ねるうち、あるとき最悪の事態を招いてしまう。脱北者たちの食事情や、異国の地で彼の命をつないだ食事とは。 話す人:野口孝行(のぐち たかゆき)さん フリーライター、編集者。1971年、埼玉県生まれ。大学卒業後、メーカー、商社勤務を経て2002年に北朝鮮難民救援基金に参加し、脱北者支援活動に携わる。 その模様を描いた初の自著『脱北、逃避行』(新人物往来社、のちに文藝春秋)が2011年、第42回大宅壮一ノンフィクション賞の候補