●ビルの二階にある喫茶店の窓際の席で本を読んでいて、ふっと本から目を外して、窓の外の、駅前と大通りとを結ぶ細い通りを見下ろすと、道幅いっぱいに窮屈そうにバスが通り抜けるところで、バスの屋根の上が見えた。側面や窓ガラスはピカピカに磨き上げられているバスも、屋根の上は土ぼこりがかたまってこびりついているような汚れ方をしていた。ああ、見えていないところは、やっぱ無防備なんだなあ、と思った。(より正確には、無防備という概念が、バスの屋根の汚れから、直接的に感じられた。) この喫茶店にはしょっちゅう来るし、空いている時はいつも窓際の席について、その下の通りを歩く人をぼんやりと見ていたりするのに、自分が下の通りを歩いている時は、喫茶店の客からの視線を意識することがほとんどないということが、不思議なことのように思えた。しばしば、この喫茶店の窓を見上げもするのに。 ここで、ひとつめの段落と、ふたつめの段落
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く