*樋の変遷*(「日本刀研究の新道」より抜粋) 樋が掻かれ始めるのは鎌倉時代の中期です。幅広の太刀が現れ、次第に焼刃が広い、大丁子の作品が生まれて参ります。そうなると自然刀身は重量を増すので是を防ぐため樋が掻かれます。樋は俗に云う血流しでも装飾でもなくその最初の目的は専ら重量を減ずることにあったと考えられます。 というわけで、古い刀の場合樋があることだけ見ても身巾、重量が相当にあったことが考えられます。注文者の意向によって多少の差はありましょうが、原則としては、今日樋のある姿の良い細身の刀を見るのは、研減りして身幅のあった刀身が細くなったか、後世(慶長頃より)に至って形態の美観を重んじて作られたものであると思います。 樋は掻き流しが古い形式であり、次いで角止めが行われたと思われます。其れは前者の方が容易だからであります。古備前時代の古い作品には概して樋は掻き通しを施されていると思います。樋の