宇多田ヒカルについて、ずっと書きあぐねたまま、どれだけの時が経ってしまったのだろう。少なくとも年の単位で、おれの文章は彼女に触れることをためらい続けている。もともと、おれは「風林火山の如く女を語れ!」という、90年代のアイドルをテーマにした一連の企画の最終章に宇多田ヒカルをもってきたいと考えていて、風*1、林*2、火*3、とここまでは順調に書き進めることができたのだけど、山、すなわち宇多田ヒカルまでやってきたところで、突然に文章を書くことができなくなってしまったのだった。 他の三人に比べて、宇多田ヒカルに特別な思い入れがあるわけではない。それほど難しいテーマだとも思っていない。おれは、彼女のことは分かりすぎるくらいに分かっているつもりだ。にもかかわらず、おれが彼女について書くことができないのは、書いてしまえば、書いて、ネットにアップしてしまえば、きっと彼女はその文章を見つけてしまうだろうこ