大阪市内の大型CD店に設けられたFM局の特設スタジオ。立ち見であふれる観客とラジオのリスナーに大阪弁で気さくに語りかけるのは、地元大阪出身のシンガーソングライター、矢井田瞳だ。「無理せず、音楽が気持ちいいなぁ、楽しいなぁと思える状態でずっと走っていけたら、それが何よりです」 これからの抱負を聞かれてそう答えた彼女は、若い世代の恋心を、誰もが共感できる日常の言葉と伸びやかで元気いっぱいな歌声で表現する。去年リリースした最初のアルバムは、日本を代表する音楽チャートのオリコン初登場でいきなり一位となり、今や若い人たちから熱い支持を得ている。 その矢井田がデビューしたのは去年五月のことだった。東京にある矢井田の所属事務所では彼女を売り込むための戦略として、低予算でCDを制作する独立プロダクション、いわゆるインディーズのレーベルを立ち上げた。技術革新でインディーズ盤の制作は簡単にできるようになり、C