「一体どこまでこのハイペースで突き進んでいくのだろう……」 荒天により2日間で中止になった2021年大会から一年。再び「トランス・ジャパンアルプス・レース(以下・TJAR)」のスタートラインに立った土井陵は、前回を上回るハイスピードでルートを駆け抜けていた。午前0時に富山県魚津のミラージュランドを出発した後、剱岳から薬師岳を通って上高地へと下りる北アルプスを1日で通過し、中央アルプスも1日で越えて南アルプスへと入っていた。 大会から発信されるSNSや、選手が装着しているGPSトラッキングから伝わってくる驚異的なスピードに、長年のTJARファンのみならず新たにこの大会を知った人たちまでもが魅了され、「いつゴールするのか?」という期待感は日に日に高まっていった。 そして、スタートから4日17時間33分、土井は大会新記録で静岡県大浜海岸に辿り着く。創設から20年を迎えたTJARの舞台に、またひと