ついにアガサ・クリスティー攻略作戦も最終回である。 第一回が本ウェブサイトにアップされたのは2009年10月7日のことであった。それから3年半あまり。作戦開始前にわたしが読んでいたクリスティー作品は、わずか7作――『アクロイド殺し』『ABC殺人事件』『そして誰もいなくなった』『オリエント急行の殺人』『ポアロのクリスマス』『葬儀を終えて』『白昼の悪魔』――のみだった。 ミステリに限らず、マニアになると嗜好だけでなく義務感が生じて、「好みじゃないかもしれないけど手をつけていないものをツブしていかねばならぬ」と思うものである。もう20年以上前にマニアの域に足を踏み入れていたわたしなのだから、クリスティーだけが、かようにぽっかりと抜けているというのは不可解なことだ。 いや、わたし自身にとっては少しも「不可解」ではない。ありていに言えば、わたしの目に、クリスティーの作品は「魅力のないもの」にしか見え