●平日の初回上映で見たのだけれど、平均年齢高めの客席には男性だけでなく女性の姿も目立ち、上映終了後には二人連れのご婦人が「やっぱり年をとってもステキよねー」と話し合う声が聞こえてきた。かつて「ダーティハリー2」の脚本を担当したジョン・ミリアスはDVDのコメンタリーで「当時、女性ファンからの手紙には“ハリー・キャラハンに誘惑されたい”じゃなくて“自分からハリーを誘惑してみたい”という内容が圧倒的だった。だから『ダーティハリー2』にはハリーが女たちから誘惑されるシーンが追加されたんだ」と語っているが、80歳近くになってもいまなお遠い異国の女たちを胸ときめかせ、同じくらい男たちに憧れの念を抱かせるクリント・イーストウッドの魅力は、この「グラン・トリノ」でも色あせることはない。以下、見ているあいだに思ったことを書き留めておく。 ●短く刈り込まれた芝生の上に散乱する陶器人形の破片をカメラがまず捉え、