はじめは飛行機が近づいてくるような“ゴー”という地鳴りの音だった。 仙台にある東北高校の野球部はセンバツの甲子園を前に、グラウンドで練習をしていた。 やがて小刻みな揺れが続き、次の大きな横揺れで選手たちは立っていられなくなった。 フェンスや照明灯が倒れそうになるのを見て、今度は逃げるようにみんながグラウンドの真ん中に集まった。 避難した体育館で誰かが持ってきたラジオから、被害の状況が次々と流れてくる。 レギュラーの中川貴文は津波の被害にあぜんとして「もう甲子園どころじゃない」と思った。 避難生活が始まると食事が1日にバナナ1本の日もあった。 風呂に入れず汗をかけないから練習はキャッチボール程度、部員たちは学校の近くの避難所で給水などのボランティアを続けた。
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