就任3年間でチームを着実に強くし、圧倒的な成績を挙げて臨んだ、 指揮官として初のシリーズ。短期決戦を制すために必要なものとは何か。 苦闘の末に栄冠を掴んだ静かなる男の、激動の日々を追った。 今年7月のオールスター期間中、秋山幸二は、落合博満と食事をともにする機会があった。その席上、秋山の話を聞いた落合は、こう驚いたという。 「お前、そこまで細かく指示してるのか。オレは、投手のことなんて任せっきり。明日の先発だってわからん時がある」 秋山には「静かな監督」というイメージがつきまとう。本人も「オレは何もしないもの。見ていて、いい選手を使うだけだから。余分なことはしない」と言う。だが、実際には、選手個々を細かく把握し、たとえば中継ぎ投手の起用法についても、普段からコーチに細かい指示を出してきた。 何もしないふり、昼行灯を決め込んで、世間からの風当たりを微妙に避けながら、チームを変えていく。それが