その時、疲れていたのかもしれない。それも体が疲れていたというよりは気持ちがそうだったのだと、今振り返ると記憶している。転職して新しい会社、変化した環境、人間関係、言葉一つ発するにも、脳から口へ指令を出して言葉を選び、慎重に話していた。そんな日々だった。 「刺激はいらない、重いニュースも聞きたくない、激しい音は嫌だ、難解なテーマの映画も本も今の自分にはヘビー過ぎる。優しい音楽、穏やかな時間、分かりやすい物語……力まずに読めるもの、ライトなエッセイはありませんか?」というタイミングに、電車のドアに貼ってあった1枚のステッカーに目が止まった。 タイトル『そういえば、いつも目の前のことだけやってきた』。爽やかな装丁、軽快なイラスト、出版社はマガジンハウス、著者は平田静子さん。これ、読みたいなぁ、今の自分にはこの本が必要だ! と思い込み、早速書店にて購入。それが本書との出会いであった。 著者の平田さ