ジュウネンブゥリデスカ 授業で習ってやたらと耳に残っている言葉ってあるもんだ。それが大正デモクラシーかもしれないし、墾田永年私財法かもしれないし、ビルトイン・スタビライザーかもしれない。私にとってはそれが「澪標(みおつくし)」であった。 澪標とは船が浅瀬に座礁しないように航行可能な境目に立てた、言わば船の道しるべとしての杭などを指すと、古文の担当のおばあちゃん先生から習ったことを覚えている。和歌に対する想いが強い人で、特に恋の和歌を説明する時には感情が入りすぎて、頬を赤らめるような可愛い先生だった。時おり熱くなりすぎて、「暑い暑い」とハンカチで扇いで授業が一時中断するなんてことはざらにあった。Y先生は元気でやっているだろうか。 そんな情緒豊かな先生から聞く言葉だったからなのか、澪標を用いた短歌には大抵、掛詞として「身を尽くす(し)」というような身体ひとつを懸命に使うという意味や、「澪標」自