おどるでく-猫又伝奇集 (中公文庫 む 33-1) 作者:室井 光広中央公論新社Amazon初期小説集二冊に未収録短篇やインタビューなどを増補した著者初の文庫本。著者の故郷南会津を「猫又」と呼ぶ一連の作品は「猫又拾遺」の土俗的奇譚・幻想譚から始まり、方言、外国語、外国人など言語の土俗性とその外とが交錯する「翻訳」の主題が貫かれているように読める。短い奇譚を集めたかたちの中篇「猫又拾遺」を見返してみたら最後の「魂柱」が、在日外国人が一度母国語で書いたものを日本語にしたという翻訳を介した手紙だとされていて、マラルメの翻訳の引用で終わるこの「猫又拾遺」の結句から「和らげ」まで、「翻訳」という問いが通底している。 どうも読んでいると著者は「言語」とは「翻訳」なのではないか、「翻訳」が言葉、言語の本質をなすものだと思っているのではないかという気がしてきた。方言と外国語、ローカルと世界、固有性と普遍性