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2014年7月27日のブックマーク (2件)

  • 中島敦 名人伝

    趙(ちょう)の邯鄲(かんたん)の都に住む紀昌(きしょう)という男が、天下第一の弓の名人になろうと志を立てた。己(おのれ)の師と頼(たの)むべき人物を物色するに、当今弓矢をとっては、名手・飛衛(ひえい)に及(およ)ぶ者があろうとは思われぬ。百歩を隔(へだ)てて柳葉(りゅうよう)を射るに百発百中するという達人だそうである。紀昌は遥々(はるばる)飛衛をたずねてその門に入った。 飛衛は新入の門人に、まず瞬(またた)きせざることを学べと命じた。紀昌は家に帰り、の機織台(はたおりだい)の下に潜(もぐ)り込(こ)んで、そこに仰向(あおむ)けにひっくり返った。眼(め)とすれすれに機躡(まねき)が忙しく上下往来するのをじっと瞬かずに見詰(みつ)めていようという工夫(くふう)である。理由を知らないは大いに驚(おどろ)いた。第一、妙(みょう)な姿勢を妙な角度から良人(おっと)に覗(のぞ)かれては困るという。

  • 名人伝―院生編|Colorless Green Ideas

    天下第一の研究者になろうと志を立てた院生。教授のもとで「学之学」を身につけ、さらには名誉教授のもとで「不学之学」を身につけた院生の末路は? 文 ある大学の研究室に所属する院生という男が、天下第一の研究者になろうと志を立てた。己の師と頼むべき人物を物色するに、斯学の権威である教授に及ぶ者があろうとは思われぬ。論文を専門誌に投稿するに皆査読を通過するという大家だそうである。院生は遥々教授をたずねてその門に入った。 教授は新入の門人に、まず先行研究をよく学べと命じた。院生は大学図書館に行き、図書館の奥深い書庫の中に潜り込んで、そこにある学術誌を片っ端から読んだ。たとえ自分の研究と関連が薄いものでもしっかりと内容を把握しようという工夫である。この院生を見た図書館員は大いに驚いた。第一、閉館時間になっても帰ろうとせず書庫から離れようとしないのでは困るという。厭がる図書館員を院生は叱りつけて、無理に

    tencube
    tencube 2014/07/27
    見よ、名誉教授は安楽椅子に座っているだけにもかかわらず、その弟子が実験を行って論文の第一著者の欄に名誉教授の名前を書いて来るではないか。院生は慄然とした。今にして始めて学界の深淵を覗き得た心地であった