Kimberly J. Kreines / Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori 2015年3月4日 龍のいない歴史があった。ナーセットが、ジェスカイとして知られる氏族のカンを務める歴史があった。彼女が自身の内に大いなる潜在能力を感じていながらも、マルドゥのカン、兜砕きのズルゴの手にかかって死んだためにそれを解き放つことができなかった歴史があった。だがその歴史は去った。果てのない時へと永遠に失われた。残ったのはこの歴史。龍たちがタルキールの空に満ち、カンは存在せず、ジェスカイという氏族も存在せず、ズルゴは鐘を突いている歴史。だが一つ、変わらぬままに残されているものがある。ナーセットの内には神秘の力が燃えている――彼女を休みなく突き動かす潜在能力は、解放されたがっている。 「何もせずにいることを覚えて」 久遠の際でためらうナーセットの心に、母の言葉が泳い