袴田事件の再審開始決定があって、半年が過ぎようとしています。速やかな審理を期待するのみですが、最近、この袴田事件に関わって、極めて重要な一文に接しました。木谷明「渡部保夫さんと袴田事件」季刊刑事弁護79号91頁です。木谷明氏については、周防正行監督の映画「それでもボクはやってない」をバックアップされたということで、専門家以外でも、ご存じの方が多いのではないかと思います。長年、刑事裁判官として、刑事裁判の原則に忠実な事実認定に腐心され、「絶望的」といわれた刑事裁判をめぐる環境の中でも、群を抜いて多い30件以上の無罪判決に関与・確定させられたということです。その詳細は、昨年末に上梓された木谷明『「無罪」を見抜く-裁判官・木谷明の生き方』(岩波書店)をお読みいただきたいと思います。 ここでご紹介したい一文は、ご自身の関わった裁判のことではなかったかもしれませんが、その本の中では触れられていない内