ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』 『ドラえもん』の「ホラふき御先祖」は、小学生だったぼくらの間で登下校のときに何度も話題にのぼったエピソードだった。 どこがそんなに気に入ったのかといえば、のび太がタイムマシンで自分の先祖を現代につれてきたとき、自動車を「鉄のイノシシ」だと言ったり、ガスを魔法だと騒いだりするのが子ども心をくすぐるのだ。 それは多分「未開人を文明社会に連れてきて面白がる」という心性もあったんだろうと思うけども、「現代の技術を、客観的かつプリミティブに言い表すとどうなるか」という視線が刺激的だったんだろうと今になって考える。やはり子どもに届く、見事なSFである。 『テルマエ・ロマエ』は古代ローマの浴場設計技師のルシウスが、現代日本の風呂へタイムスリップしてしまう物語である。 公衆浴場、個別の浴場、露天風呂……とエピソードごとにルシウスは設計にゆきづまり、そのたびに現代日本のふさ