ポケットのなかのスロットマシン ある夜のサンフランシスコ。かつてグーグルの「プロダクト・フィロソファー(製品哲学担当者)」だったトリスタン・ハリスは、パジャマ姿の男から名札を受け取り、自分の偽名「Presence」を書きこんだ。 ハリスは「デジタルデトックス実験」のイベント「Unplug SF」にやってきたのだ。ここでは、主催者によって本名を使うことを禁じられている。本名だけではない。時計、「w-talk(仕事の話)」、「WMD(Wireless Mobile Devices / 移動無線デバイス)」も禁止されていた。 赤褐色の髪で、こざっぱりとした顎ひげをたくわえた華奢な32歳のハリスも、iPhoneを使えなくなった。ハリスは、iPhoneの中毒性は相当なものだと考えており、それゆえこのデバイスを「ポケットのなかのスロットマシン」と呼んでいる。 ハリスに続いて、私も広い会場に入った。集ま