裸足の男が道端にしゃがんでいた。魚屋の露天商だった。大きな刃の付いた道具を前に置いて、足で台を押さえながら魚をさばいている。近づいてカメラを構えると、男は手を止めて一瞥をくれる。 見ての通り、男が使っているのは日本ではあまり見かけないタイプの包丁だ。立った刃が取り付けられた据え置き型の包丁なのだ。日本で使われている包丁は包丁を動かして物を切るのだけれど、この包丁は据え置き型なので切りたいものを動かして切るようになっている。男も魚を上下に動かしてさばいていた。 この辺りでは魚屋だけでなく、食堂や肉屋でもこのタイプのものが使われているのを見かける。とてもメジャーな道具のようだ。でも、インド以外では見たことが無いかもしれない。