メクネスの旧市街の路地もモロッコの他町の旧市街と同じように狭く、両脇にはびっちりと建物というか壁が立っている。そのため、たとえ日中であっても路地全体に日差しが差し込むことはほとんどない。歩いていると、まるで立体迷路の中を歩いているような気分になってくるのだった。ここでは日差しは部分的にしか降り注がない。 そんな路地に出来た日溜まりの中を男が歩いていた。ニット帽を被って、ジュラバを纏っている。僕からしてみると相当の厚着だけれど、このような格好で歩いている地元の人は多い。この男が特別な寒がりという訳ではないのだ。対照的に僕は同じ路地をTシャツ1枚で歩いていたから、なんだか僕の体感温度は地元の人たちの体感温度と全く異なっているような気がしてならない。今は1月だから冬の真っ最中だ。僕にとっては冬なのに薄着で歩き回れるくらいに暖かいのだけれど、地元の人にとってはこのような日でも寒いと思っているのかも