台北にある忠烈祠の門前にはヘルメットをかぶった衛兵が立っていた。ここも中正紀念堂と同じように軍事施設でもないのに衛兵が立っているのだ。実際に具体的な敵から守っているというよりも、守っているという形式が大切なのだろう。 職務上、衛兵は動くことは許されない。じっとしたまま形式を保つのがその仕事だ。そのため、たとえどんなに暑くても額を流れる汗を拭うことさえ許されない。 そんな衛兵にレンズを向けても、やはり微動だにすることはなかった。衛兵が自分の意志で動かして良いのは瞼くらいなのではないだろうか。しかし、写真の中の衛兵は目を閉じていた。何かを考え込んでいるかのように目を瞑っていたのだ。このままだと、いざという時に動けないのではなかろうかと、要らぬ心配をしてしまった。