「コーヒーでよいですか」。律儀なもてなしに少々驚いた。「グラフィティのような画風で注目を集めるアーティスト」。その情報からのイメージとは随分違った。大山エンリコイサム(31)。彼を特別な存在にしているのは、独特なスタイルで描く作品はもっともながら、「描く」と「書く」の二つの武器を持ち合わせていることだ。ストリート・アートと現代美術との関連性、歴史やアカデミックな部分にフォーカスをあてて、きちんと言葉で伝えられる人は、今、彼しかいないだろう。 彼が発信する言葉は、熟語の多い文体ゆえにか、「頭脳派」と一言でくくられることも多い。だが大山は、そういった既に存在する定義や、誰かの発言をなぞっただけの「硬直する思考」を、とかく嫌う。とりわけ「ストリート・アート」に関しては、徹底的に。 二足のわらじは「邪道なのか」 ブルックリンに構えるスタジオで、彼は大きな脚立にのぼり、壁一面にかけられた作品を静かに
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