手のひらに収まる小さなケースに、固く凍った乳白色の液体が入っている。埼玉県川越市にあるビーンスターク・スノー(本社・東京)の開発部に4台ある大型冷凍庫。マイナス85度に保たれたその中にあるのは、昭和35年から何度も行ってきた母乳調査で集められた母乳だ。 「母乳を与えられず、粉ミルクを使うことで後ろめたさを感じるお母さんの気持ちを和らげたい。母乳に少しでも近づけ、安心してもらいたいのです」。開発部長の中埜拓さん(49)は、そう話す。多様な免疫成分 同社が力を入れるのは、免疫成分だ。乳児の未熟な免疫力を補うため、母乳には多様な免疫成分が含まれる。同社の粉ミルクには、病原体やウイルスが消化管に付着するのを防ぐ「シアル酸」や消化管を成熟させバリア機能を高める「リボ核酸」、消化管の免疫細胞を活性化する「ヌクレオチド」などが入っている。 粉ミルクは国の法律で「乳児用調製粉乳」として成分組成の基準が定め