著者の前著『磁力と重力の発見』はベストセラーになり、いくつもの賞をとったが、率直にいって私には何がいいたいのかさっぱりわからず、途中で投げ出した。そういう賞の選考委員の世代にとっては、山本義隆という名前は神話的存在であり、学問の世界から忘れられていた著者が、本格的な学問的業績でカムバックしたことへのご祝儀だったのかもしれない。 それに比べれば、本書は「17世紀の科学革命の源流を16世紀にさぐる」というテーマが明確であり、これは一昨日の記事でも書いた産業革命ともつながる重要な問題だ。Mokyr "The Gifts Of Athena"などの経済史の研究も指摘するように、産業革命が18世紀の西欧に起こったのは、17世紀の科学革命によって実証的な知識が蓄積されたことが大きな要因である(少なくとも出生率よりは説得力がある)。 では、その科学革命はなぜ起きたのか、というのが本書のテーマである。