思わぬ事件が起こる。その種類はさまざまであるが、老生、一生を教育や研究に関わってきたので、それと関連する事件に対してはつらさを感じる。 例えば大学入学共通テストの当日、受験生らに凶器で切り付けた高校2年生がいた。学校の面接で東大医学部へ進学できるコースに合格する学力不足を告げられて絶望し、名古屋から東大前まで出てきての犯行であった。この事件は多くのことを示してくれている。種々の論評が出ているが、老生、ぜひとも告げたいことがある。 それは、教育において最も大切なこと―すなわち〈こころざし〉を立てることが、本人にも学校にも欠落している点だ。 本来は、東大医学部が第一ではなくて、医学部進学が第一であり、次いで大学選びなのである。〈医学をこころざす〉、この夢を果たす方法はある。そのことを知らず、東大をくっつけている。そこには〈こころざし〉が見えない。 以前、高校生が犯した自宅放火、あるいは実母殺害