『社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学』 著:ジョナサン・ハイト,訳:高橋 洋; 出版社:紀伊國屋書店 ; 発行年月:2014年4月; 本体価格:3,024円 「インテリの喧嘩には終わりがない」 大学という組織の一員になったばかりの頃に最初に感じたことである。あるビジネススクールの教授は「教授会は動物園のようなものだ」とよく言うが、言い得て妙な比喩だと思う。 ライオン、トラといった猛獣から、タヌキ、キツネのような狡猾な輩、腐肉を漁るハイエナやハゲタカまで、多様な動物がひしめきあい、知性という仮面を被って、論争という喧嘩を繰り広げている。 インテリは、エビデンスや理屈を並べたて、理論整然と喧嘩をする。喧嘩の根源は、感情情的な(しかも根深いところでの)対立に起因していることが多い。傍から見るとそれがよくわかるのだが、本人達はあくまでも理性的な知的論争をしていると認識し