「ナポレオンに選ばれた男たち〜勝者の決断に学ぶ」(藤本ひとみ著・新潮社)より。 【情報の収集から決定、実行までの速さに、ベルティエは目を見張った。まるで下士官のような身軽さだった。様々な軍隊の司令部に所属してきたベルティエは、せっかく情報を提供しても、それを生かしきれない将軍をたくさん見ていた。決断力がないのである。今動かなければチャンスを失うと言う大事な局面で動けない。参謀としてははがゆくもあったし、自分のそれまでの努力が無になるむなしさをかみしめることもたびたびだった。 だが、この司令官は違う。もしかして彼なら、現状を何とかしてくれるかも知れない。希望を持ったベルティエはナポレオンと2人になる機会をとらえ、自分の調査結果を報告した。 「よく言ってくれた」 ナポレオンは、ベルティエの肩をたたいて激励した。 「参謀長のあなたは、私の片腕だ。あなたの力なくして私は何もできないだろう。これから