■中華世界の未来見極める指標 台湾へ観光旅行をすれば必ずといっていいほど台北市の故宮博物院を訪れる。その壮麗な中華文明の殿堂は博物館というイメージからすれば雰囲気の違う建築物であり、広大な面積は見学者をして疲れさせるものがある。一方、北京市の故宮博物院はかつての王宮である紫禁城で巨大な建築物群を駆け巡るうちに通過してしまうことが多い。 しかしふたつの博物院に収蔵されている文物は世界的な文化遺産であり中国文明を代表する名器名品で網羅されている。なぜ故宮は分別されそれぞれの立場を維持しながら人々を魅了しているのか。 この誰でもが疑問に思いかつその不思議さに気が付かないでいるという現実に、中華圏担当の新聞記者らしい鋭さとあつかましさで切り込んだのが本書であり、知ろうとしない日本人たちに昭和史と現在の中華社会の問題を突きつけたのが著者の使命なのだ。 侵攻する日本軍を避けて北京の故宮にある宝物を2万